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日本プロ野球の歴代ポジション補正値

ポジション補正値とは、ポジションごとに守備難易度が異なることを補正するための値です。

 

守備難易度

ビルジェームズが守備のスペクトラムという概念を1980年代に初めて紹介したことがあります。

守備のスペクトラム

指名打者 – 一塁手 – 左翼手 – 右翼手 – 三塁手 – 中堅手 – 二塁手 – 遊撃手 – 捕手

左から右に行くほど守備が難しくなります。右から左に移動するのは簡単ですが、左から右に移動するのは難しいです。トム・タンゴとシャン・スミスが遂行した近年の研究では、2000年代以降の守備難易度は

指名打者 – 一塁手 – 左翼手、右翼手 – 三塁手、中堅手、二塁手 – 遊撃手 – 捕手の順で見ています。

NPBでも捕手と遊撃手は守備が難しいポジションであり、一塁手や左翼手は守備しやすいポジションという認識は同じです。しかし、程度の違いはあってもおかしくなく、配列がNPBでもそのままであるかどうか検討してみる必要があります。

 

守備難易度を推定する方法

守備難易度を推定する方法としては、攻撃力を利用して間接推定する方法と、守備力で推定する方法があります。

攻撃力で間接推定する方法は、高い守備力を必要としないポジションは攻撃力で取り出すという発想から始まります。一般的に高い守備力を要求する遊撃手のようなポジションは攻撃力が低くても起用になり、一塁手のように守備があまり重要なポジションは攻撃力がそれほど優れなければ起用になります。この方法の利点は、すべての選手が対象となることであり、計算が容易な方です。しかし、すべてのポジションに才能が均等に分布していると仮定して成立する方法であり、実際には才能が集まるポジションと好まないポジションが存在します。

守備力で推定する方法は、2つのポジションで出場した選手の守備性的差を比較することです。中堅手で-5点だった選手が左翼手で+5点だった場合、両ポジションの差は10点になります。もちろん選手個々人ごとに差があるので、すべてのケースを統合して平均値を求めます。この方法は、全ての選手を対象としたわけではないので、サンプルが偏向されるという問題がある。実際に一塁手を除く内野手から外野手に移動する場合は多いが逆の場合はありません。そして、取っ手の問題が考慮されないため、内野手を低評価し、外野手を高評価する恐れがあります。

 

攻撃力で推定したNPBの年代別守備難易度

年代
1930~1940 1.52 -0.75 0.45 0.05 0.66 -0.51 -1.00 -0.42
1950 1.71 -0.72 0.51 -0.27 0.52 -0.53 -0.73 -0.48
1960 1.73 -1.13 0.63 -0.21 0.71 -0.79 -0.74 -0.20
1970 1.63 -1.31 0.48 -0.09 1.10 -0.73 -0.69 -0.38 -0.82
1980 1.90 -1.17 0.34 -0.47 0.73 -0.38 -0.54 -0.42 -1.25
1990 1.76 -0.98 0.37 -0.23 0.54 -0.48 -0.55 -0.42 -1.23
2000 1.81 -1.12 0.69 -0.34 0.59 -0.71 -0.52 -0.40 -1.01
2010 1.99 -0.79 0.34 -0.16 0.55 -0.72 -0.78 -0.44 -0.90
2020
Total 1.77 -0.99 0.47 -0.23 0.67 -0.62 -0.69 -0.39 -1.06

単位は得点ではなく勝利基準です。 NPBの場合、約9点が1勝の価値があります。サンプルが少ない2020年代は省略しました。守備力で推定した難易度と比較するため、捕手と指名打者を除くと次のようになります。

 

攻撃力で推定したNPBの年代別守備難易度 (捕手、指名打者を除く)

年代
1930~1940 -0.56 0.68 0.26 0.89 -0.29 -0.77 -0.21
1950 -0.50 0.76 -0.03 0.78 -0.29 -0.48 -0.25
1960 -0.91 0.89 0.03 0.97 -0.54 -0.48 0.04
1970 -1.10 0.72 0.14 1.34 -0.50 -0.45 -0.15
1980 -0.93 0.63 -0.20 1.02 -0.11 -0.26 -0.15
1990 -0.75 0.64 0.01 0.81 -0.23 -0.30 -0.17
2000 -0.89 0.96 -0.09 0.87 -0.45 -0.26 -0.14
2010 -0.53 0.64 0.12 0.85 -0.43 -0.49 -0.17
2020
Total -0.79 0.75 0.02 0.96 -0.37 -0.42 -0.15

捕手を除く7ポジションの平均が0(ゼロ)になるように調整した値です。

 

守備力で推定したNPBの年代別守備難易度

年代
1930~1940 -1.11 0.40 0.36 0.99 -0.59 0.43 -0.48
1950 -1.03 0.57 0.32 1.05 -0.75 0.33 -0.50
1960 -0.99 0.59 0.32 1.01 -0.89 0.44 -0.48
1970 -0.76 0.16 0.18 0.54 -0.52 0.67 -0.25
1980 -0.86 0.07 -0.12 0.75 -0.48 0.71 -0.07
1990 -1.09 0.05 -0.07 0.82 -0.47 0.76 -0.01
2000 -1.08 0.24 -0.30 0.78 -0.40 0.70 0.05
2010 -0.99 0.34 -0.28 0.82 -0.49 0.70 -0.10
2020
Total -0.98 0.23 -0.06 0.73 -0.48 0.69 -0.13

 

攻撃力と守備力の両方を考慮して、守備難易度を推定

攻撃力で推定する方法と守備力で推定する方法の両方を考慮して、互いの欠点を補うことができます。守備力で推定した方法は、取っ手問題のため内野手が低評価され、外野手が高評価されるおそれがあります。攻撃力で推定する方法は、ポジションごとに才能が等しく分布されなければ正しく機能します。ある程度そんな傾向はあるだろうが攻撃力が10点不足=守備力で10点満回とは見られません。

NPBの1936~2021年通算推定値は次のとおりです。

ポジション 攻撃推定 守備推定 平均
一塁手 -0.76 -0.98 -0.87
二塁手、三塁手、遊撃手 0.56 0.30 0.43
左翼手、中堅手、右翼手 -0.31 0.03 -0.14

同じグループの二塁手、三塁手、遊撃手の間に守備難易度差と左翼手、中堅手、右翼手間に守備難易度差は攻撃力を全く考慮せず、守備力のみを基準とします。一塁手を除く内野手グループと外野手グループとの比較には、不足した守備力を攻撃力で撤回するという仮定がある程度は機能しますが、同じグループ内では正しく動作しません。左翼手は中堅手より守備力が10点以上低いが、攻撃力でそれほど挽回できません。一般的には、中堅手が左翼手よりも優れた選手です。

 

攻撃力と守備力の両方を考慮して推定したNPBの年代別守備難易度

年代
1930~1940 -0.83 0.41 0.37 1.00 -0.69 0.32 -0.58
1950 -0.76 0.50 0.24 0.98 -0.76 0.32 -0.51
1960 -0.94 0.58 0.32 1.00 -0.89 0.43 -0.49
1970 -0.92 0.37 0.40 0.75 -0.69 0.50 -0.42
1980 -0.89 0.19 0.00 0.87 -0.60 0.60 -0.18
1990 -0.91 0.16 0.03 0.93 -0.63 0.60 -0.17
2000 -0.98 0.40 -0.13 0.95 -0.60 0.50 -0.15
2010 -0.76 0.46 -0.16 0.94 -0.69 0.50 -0.29
2020
Total -0.87 0.36 0.07 0.86 -0.65 0.52 -0.29

 

捕手の守備難易度

捕手は守備力を測定することが難しく、他のポジションを兼ねる場合が稀であるため、難易度推定が難しい。攻撃力で間接推定する場合、捕手の調整値は143試合当たり1.8勝(16点)程度で、2000年代以降は2勝(18点)に迫る。もし捕手の才能が他のポジションと同じであれば、不足した攻撃力をそれだけ守備力で撤回すると見られます。

しかし、MLBの場合、捕手のポジション調整値は、162試合(1458イニング)あたり10~12点程度であることと比較すると、過度の高評価である可能性が高いです。ただし、任意に付与しない場合は、適切な基準が必要です。

だから捕手の場合、主戦を除いた選手の攻撃力を参考にした方が良いと思います。非走戦捕手は、非主戦野手に比べて1.2勝(11点)程度攻撃力が低いです。

 

指名打者の守備難易度

攻撃力で間接推定する場合、一塁手に似た値が出ます。しかし、1塁手より守備力がなくて指名打者をするのが一般的なので、調整値も一塁手より低く付与されるのが正しいと思われます。

MLBの場合、他のポジションを兼ねた指名打者の守備力は1塁手より4~6点低いです。 (162試合基準でUZR 4点、DRS 6点) ところで、他のポジションを兼ねた知名打者は、指名打者の中で守備が上手な選手である可能性が高いため、代表性が落ちます。そのため、指名打者の調整値は多少任意に付与するしかありません。

トム・タンゴは指名打者の守備力を1塁手より10点悪いとみなしたが、代わりに指名打者で走ると打撃が落ちる現象があるため、+5点をして指名者打者の調整値は1塁手より5点低くなりました。Baseball Referenceは1塁手より6点ほど低く与えました。

NPB STATSも指名打者の補正値はある程度任意に付与し、143試合に-1.43勝です。同じ期間一塁手の調整値平均は-1.04勝なので約0.4勝の差があります。

 

捕手と指名打者を追加したNPBの年代別ポジション補正値

年代
1930~1940 0.96 -0.96 0.27 0.23 0.86 -0.83 0.19 -0.72
1950 1.15 -0.93 0.33 0.08 0.81 -0.93 0.15 -0.68
1960 1.22 -1.12 0.41 0.14 0.83 -1.07 0.25 -0.66
1970 1.05 -1.07 0.23 0.25 0.60 -0.84 0.35 -0.57 -1.43
1980 1.21 -1.06 0.02 -0.17 0.69 -0.77 0.43 -0.35 -1.43
1990 1.29 -1.10 -0.02 -0.15 0.74 -0.82 0.41 -0.36 -1.43
2000 1.33 -1.17 0.21 -0.32 0.76 -0.79 0.31 -0.34 -1.43
2010 1.33 -0.95 0.27 -0.35 0.75 -0.88 0.31 -0.48 -1.43
2020
Total 1.21 -1.04 0.19 -0.11 0.69 -0.82 0.35 -0.47 -1.43

実際に守備をしない指名打者は除き、捕手を含む8つのポジションの平均が0(ゼロ)になるように調整してくれます。ポジション調整値は、定義上平均は0でなければなりません。こうして捕手と指名打者を追加した年代別守備難易度が完成しました。難易度順は捕手>遊撃手>中堅手>二塁手>三塁手>右翼手>左翼手>1塁手順です。 MLBと比較すると、中堅手が二塁手より高い現象が現れています。

 

年度別ポジション補正値

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