守備指標における失策の取り扱い FP (Fielding Percentage): (刺殺+補殺)/(刺殺+補殺+失策) RF (Range Factor): (刺殺+補殺)/9イニング ZR(Zone Rating):処理した打球/責任打球(内野手はゴロに責任、外野手はフライとライナーに責任) DER(Defensive Efficiency Ratio): チームが処理した打球/チームBIP 守備率を除く多くの守備指標は、公式を見るとわかるように失策(失策出塁)をただ安打と同じように扱っています。 OAA、DRS、UZRとFP、DERの相関関係(相関係数基準) OAA DRS UZR DER 0.492 0.618 0.417…
守備指標が打撃指標ほど信頼できない理由 守備指標は、打撃指標とは異なり、長い間信頼性に疑問を抱いてきました。 各種守備指標の数値が野球ファンや専門家評価と同等になる場合が少なく、複数の守備指標間に差が大きい場合が多いためと考えられます。 総合的な打撃能力を測定する指標としては、最も簡単なのが出塁率と長打率を加えたOPS(On Base Plus Slugging)です。 それ以来、WOBA(Weighted On Base Average)などのより洗練された指標が登場しましたが、結果はOPSとあまり違いはありません。 だからOPS以降のどの打撃指標も選手間ランキングは似ています。打撃指標は本塁打、3塁打、2塁打、1塁打、四死球が多い順で良いからです。 それに比べて守備は刺殺と補殺が多いと守備力に優れていると言うのは難しいです。 打撃は打席=打撃機会なので分母になる機会が何回か明確にわかります。 しかし、守備は打撃の打席のような記録がないため、機会が何回か分かりにくいです。 守備は他の場所の守備手とグラウンドを共有するので、誰の責任であるかを把握するのは困難です。 遊撃手と2塁手の間にぴったりの中で打球が通り過ぎたらそれは誰の責任でしょうか? また、安打はベースを多く進むほど、1塁打、2塁打、3塁打、ホームランで区分されますが、守備は容易な打球や難しい打球や、特に区別せず、アウトに関与すると刺殺や補殺が与えられます。 簡単な打球をつかむ場合には失策が与えられますが、審判の主観に従うという問題があります。 このように刺殺、補殺、失策などの記録だけでは精巧な守備力評価が難しいため、様々な方法を活用して多くの守備指標が考案されました。 その中で最近まで最も優れた守備指標として認められていたのが、UZR(Ultimate Zone Rating)やDRS(Defensive Runs Saved)のような守備指標です。…
ポジション補正値とは、ポジションごとに守備難易度が異なることを補正するための値です。 守備難易度 ビルジェームズが守備のスペクトラムという概念を1980年代に初めて紹介したことがあります。 守備のスペクトラム 指名打者 – 一塁手 – 左翼手 – 右翼手 – 三塁手 – 中堅手 – 二塁手 – 遊撃手 – 捕手 左から右に行くほど守備が難しくなります。右から左に移動するのは簡単ですが、左から右に移動するのは難しいです。トム・タンゴとシャン・スミスが遂行した近年の研究では、2000年代以降の守備難易度は 指名打者 –…
ポジション別の守備難易度を推定する方法のうち、攻撃力で推定する方法があります。遊撃手のように高い守備力を要求するポジションは攻撃力が低くても起用になります。つまり、低い攻撃力を守備で取り出すことができます。逆に左翼手や一塁手のように高い攻撃力を要求するポジションは守備力が低くても起用されます。すべてのポジションに才能が均等に分布している場合、攻撃力+守備力が似ているでしょう。このようなロジックで攻撃力が高いポジションはそれほど守備力が低く、攻撃力が低いポジションはそれだけ守備力が高いと見ているのです。 ポジション別攻撃力比較方法 各ポジションで選手が記録した攻撃得点を合計します。 攻撃得点=打撃得点+ジュール得点 打撃得点=Rbat(パークファクター調整して投手除いたwRAA) 走塁得点=Rsb(盗塁得点)+Rdp(兵殺回被得点)+Radv(進塁得点) 複数のポジションでプレーした選手の場合は、守備に基づいて配分されます。もし選手が中堅手で300イニング、右翼手で700イニングを走った場合、貢献度を中堅手で30%、右翼手で70%に分けます。このように、すべての選手のポジション別攻撃得点を合算し、標本サイズを増やすために10年単位で結びます。 1リーグ時代だった1930~1940年代は競技数が少なかったので一緒に結びました。 143試合(約600打席)当たりの攻撃得点が10点なら守備難易度はその逆の-10点になります。 攻撃力で推定したNPBの守備難易度 年代 捕 一 二 三 遊 左 中 右 指 1930~1940 1.28 -0.51…
過去の守備難易度推定方法 現在、日本プロ野球 の最も優れた守備指標はUZR(Ultimate Zone Rating)ですが、集計が始まってから古くなっていないため、過去の分析は不可能です。 MLBもUZR、DRS(Defensive Runs Saved)は2000年代以降存在し、それ以前はTZ(Total Zone)を利用して守備難易度を推定しています。Baseball Referenceで提示した過去の守備難易度を見ると最近と違いがあります。 19世紀までさかのぼると中堅手とコーナー外野手の差がほとんどなく、一塁手も守備が容易なポジションではありませんでした。 NPBも過去の守備難易度が現在と似ているかどうかはわかりません。過去のUZRはありませんが、代わりにFS(Fielding Share)を利用して過去にも守備難易度推定が可能です。 守備難易度を推定した方法については、守備力と推定した最近日本プロ野球のポジション別守備難易度をご覧ください。 FSと推定したNPBの年代別守備難易度 年代 一 二 三 遊 左 中 右 1930~1940…
ポジション調整値は、ポジションごとに守備難易度が異なるものを調整するための値です。 守備難易度を推定する方法の中に、複数のポジションで出場した選手のポジション別守備指標を比較する方法があります。 例えば、遊撃数だった時、守備力が-5点の選手が3塁手では+5点なら、遊撃手と3塁手の守備難易度差は10点差になります。 このような場合を集計して平均を出すと、ポジション間で難易度の差を求めることができます。 2014~2021年8年間のUZR(Ultimate Zone Rating)データを用いて分析を試みました。 両ポジションの守備指標の違い 同年度に2つのポジションで守備記録を持つ選手を対象に守備指標の違いを比較します。ポジションごとに異なる守備は調和平均を使って合算します。守備力はUZR/143(1287イニングあたりUZR)で比較します。 下の表は、2014~2021年の間、一シーズンに二塁手と遊撃手の2つのポジションで行われた記録がある選手のうち、調和平均イニングが300イニング以上の選手に限定して比較したものです。 選手 年度 二塁手 イニング 遊撃手イニング 二塁手 UZR 遊撃手UZR 二塁手 UZR/143 遊撃手UZR/143 イニング調和平均 UZR/143 違い…
現在、NPBで最も優れた守備指標はUZR(Ultimate Zone Rating)です。 しかし、NPBでUZRが測定され始めたのは古くはなく、UZR測定はビデオ分析が必要なため、過去のUZRは算出できません。 そのため、UZRほどではなくても置き換える指標が必要です。 基本的な守備記録である補殺、刺殺、失策、倂殺などを最大限活用し、FS(Fielding Share,フィールディングシェア)という守備指標が作られました。 FSの評価項目は、守備範囲、失策、暴投、捕逸、捕手、倂殺、送球に分けられます。 その中で最も重要で厳しい守備範囲について具体的に説明します。 FS守備範囲算出原理 DER(Defense Efficiency Ratio)という指標があります。 DER =チームでアウト処理した打球/インプレイ打球(BIP) = 1-(安打+失策出塁-本塁打)/(打者数-本塁打-三振-四死球) 単に打球の中で処理した打球の数がどのくらいになるのか、打球処理率を評価するだけです。 DERはチームのBIPがそのまま責任打球になります。 ところで、ポジション別に見ると処理した打球数は分かりますが、責任打球は分かりません。たとえば、中堅手の打球処理率を計算する場合 中堅手の打球処理率:中堅手がアウト処理した打球/チームBIP ポジションごとに打球が均等に分布している場合、チームBIPをそのまま使用することもできますが、実際に一シーズンの標本では打球が均等に分布されません。あるポジションには打球がたくさん行き、あるポジションには打球が少なく行くことができます。そのため、補正が必要です。 ポジションごとの責任打球を正確に知ることはできませんが、責任打球の範囲を狭めることはできます。他のポジションが処理した打球は責任打球から除外することです。そういう観点から見ると、外野で処理した打球は内野の責任ではなくなります。守備領域が互いに重なる部分があるため、他のポジションが処理したと責任が全くないわけではありませんが、ほとんどは責任打球ではないといえるでしょう。 …